
発達障害とは、発達の比較的早期に現れる特性で、学業上の適応に困難さを引き起こすものと言われています。
原因としては、何らかの要因により、先天的に脳の一部の機能に偏りがあることが原因とされています。一部の特性においては、
胎生期や出生時(超低体重出生など)の異常、遺伝的要因などが考えられています。
特徴的なこととして、様々な種類と程度があり、障害なのか性格なのかわかりにくいことがあります。また、年齢によって状態が変化することがあり、思春期以降に、他の精神疾患(二次障害)を併存することもあります。
◆発達障害の経過
- 小学校低学年まで:学校で嫌われたり、いじめられたりすることが少なくないが、本人はわかっていないことが多いです。
- 小学校高学年:集団ルールが分かってくるとともに、自分が嫌われていることに気づき、些細なことで「いじめられた」と言い立てたりすることがあります。
- 中学校以降:「みんなが自分を迫害する」などという関係被害念慮・妄想を認めることがあります。
◆ここでは、対人関係に問題がある、自閉スペクトラム症(ASD)の説明をします。
まず、スペクトラムとは何だろうと思いませんか?
これは、知的能力障害を伴った自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害、知的能力障害を伴わない高機能自閉症などを含む、最重度から正常範囲の偏りまでの連続体のことを意味します。
◆自閉スペクトラム症(ASD)は、3歳以前から見られる3つの特徴があります。

◆高機能自閉スペクトラム症(ASD)の症状
- グループでの業務・活動などの集団行動が苦手。
- 言葉を字面通りに理解し、比喩表現や冗談が理解できない。
- 自己流(マイルール)で物事を進めたがる。
- 言われたことを独自に解釈して理解のズレが生じ、やり取りがうまくかみ合わない。
- 特定の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)がひどく敏感または鈍感(感覚の偏り)。
- 極端な偏食がある。
- 言語よりも視覚での理解の方が優位(視覚優位)。
- 外界の認識が苦手なため、些細な事で混乱しやすい(パニック)。
- 過去の辛い場面が突然思い出され、そのせいでパニックが起こる(タイムスリップ現象)。
- 自分の興味あること(コレクション)や日常生活動作の手順などに、強いこだわりがある。
- 想定外の行動を取ることに抵抗を示す。
- 自分が見たり予想したりしていた以外の出来事や成り行きを、想像したり納得することが困難。
- 社会の暗黙のルールがわからない。
- 他人の気持ちや事情を考えず、マイペースに行動し、自分の関心ある話を一方的に話す。
- 自分の思い通りに他の子が動いてくれないと怒る。
- 正直すぎる発言を平気で言ってしまい、相手を傷つけてしまう。
- 考えていることをそのまま独り言のように声に出して言ってしまう。
- 規則を守りすぎるため、融通が利かない。
- 子どもなのに家族や友達にも難しい言語(丁寧語)を使うが、意味は十分に分かっていない。
- 同年代よりも、自分に合わせて会話を進めてくれる大人との会話を好む(もしくは年下)。
◆自閉スペクトラム症(ASD)支援におけるポイント
(1)成功体験の重要性
- 学校などでうまくできたこと、ほめられたこと、達成の満足感を得られたこと(成功体験)などは、その後のライフステージをサポートする重要な要因となります。
- 子どもの得意なものや好きなものを把握すると良いです。
- 子どもを成功体験に導けるように環境を設定・調整していくと良いでしょう(大小にかかわらず、子ども本人が成功できたことを自己認識できればよいです)。
(2)支援の目標設定、実践、その評価
- 目標設定と子どもが行ったことに対する評価を、できるかぎり具体的・客観的にしていくことが大切です(主観的な、曖昧な表現を用いることは混乱を招くことになるので、注意してください)。
- 「できること・得意なもの」と「苦手なもの・嫌いなもの」に分けてまとめておくと良いでしょう(得意なものを先にまとめてください)。
- 成功体験のない学習は、持続することが難しいため、子どもが得意なものと、少し頑張ればできるものを優先的に設定すると良いです。
(3)まとめ
- 指示やスケジュールなどを、文字や絵およびイラストなどを利用して、視覚的に分かりやすい工夫をすると良いでしょう。
- 変更があった時は、分かった時点で予定表を見せたり、なぜ変更になったかの理由を事前に伝え、納得することで、パニックが起こりにくくなります。
- やって欲しいことを一度にいうと混乱を起こします。スモールステップで目標達成させることで成功体験ができ、自信がつきます。
- 否定的な言い方からではなく、肯定的な言い方を意識してあげてください。
- 子どもの発達課題で悩みを抱えた場合は、発達障害者支援センターや、専門家(医師、臨床心理士など)にご相談することを推奨します。
※上記の内容は、下記の文献を参考にして作成しました。
- 小国美也子「てんかんと自閉症スペクトラム障害」鎌倉女子大学紀要, 24, 153-159, 2017.
- 国立精神・神経センター精神保健研究所「ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き」, 2010.
- 野村総一郎・樋口輝彦ら「標準精神医学」医学書院, 2015.